ムッシュKの日々の便り

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パン屋

 今いるバルマ(Balma)は人口1万3千の比較的小さな郊外の住宅地です。以前書いたように、教会の周辺に小型スーパー「カルフール」があり、車で5分のところには大型スーパー「アンテル・マルシェ(Inter Marché)」があって、食料品から家具、電気製品、本まで購入できます。ただ毎日のパンとなると、住民の多くは教会の近くに固まって店を開いている3軒のパン屋へ買いに行きます。3軒の店のパンの味は微妙に異なり、各家庭で贔屓にする店が違っています。わが家はもっぱら教会の隣に店を構える写真の店で、朝と晩にパンを買うようにしています。
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 お米が主食の日本では家でご飯を炊きますが、パンは自家製というわけにはいかず(日本では優れもののパン焼き器で自宅でパンを焼くようですが、こちらではまったく普及していません)、主食のパンはパン屋へ買いに行かなくてはなりません。一日分をまとめ買いする人もいますが、近くの人は朝夕買いに出かけます。パンが何本も入った紙の袋を手にもったり小脇にかかえたりして歩いている人をよく見かけるのはそのためです。



 フランス語でパン職人は boulanger 、パン屋はboulangerieといいますが、これを名乗るには法令で定められた規定に則ってパンをつくり販売する必要があります。法令はバラデュール内閣の時に決められた「1993年9月13日のパン法令」と呼ばれるもので、6条からなり、パン職人およびパン屋のあり方を定めています。要は小麦粉その他の材料を選び、粉を練り、発酵させ、焼き上げる工程をすべて一人で行う者がパン職人で、それを売る店がパン屋だとしています。この法令は1998年5月に施行されました。

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 写真のようにバルマの3軒はいずれもこの規定にかなっているboulangerieで、伝統を誇るパンづくりをしていることを強調するためにArtisan(職人の店)と看板に大書しています。それというのも2004年のフランスでは、パンを売る店34200軒のうち自分のところでパンを作っている店が70パーセントだったという統計があります。パンづくりは朝が早く、時間もかかるきつい仕事ですから、工場で大量に作ったパン種を朝のうちにトラックで配達してもらって、それを焼くだけといった店が増えています。推測ですが2011年のいま、この数字は60パーセントを切っているかもしれません。
 Paulというパン屋がパリでは人気で東京などへも進出しています。Paulがboulangerieといわずに、なぜPaulと名乗ったか。実はパリにあるPaulの店32軒のうちで全工程をやっているところは13軒だったことから、パン屋ではなく店名を単にPaulとしたのです。パンの美味しさと店構えの斬新さもあって人気店となりました。

 ところでフランスでは朝食にはクロワッサンやパン・オ・ショロラ(チョコレート入りパン)を食べていると思っていませんか。そんなことは決してなく、家で食べるのは大抵バゲットやパリジャンという棒状に焼き上げたパンです。棒状のパンには大きさ(重さ、長さと太さの)の違いによって、バゲット、バタール、パリジャン、フリュート(フルートのように細い)、フィセル(紐のようにさらに細い)などがあります。これらは基本的には、小麦粉、パン酵母、塩、水、そして発酵を促すモルト(麦芽糖)だけでつくるのが基本です。
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 パン・ド・カンパーニュ(田舎のパン)といって、円盤を厚くしたような大きなパンには精製度の低い小麦粉を用い、ライ麦粉を混ぜることもあります。クロワッサンやパン・オ・ショコラはバターを多く入れていますから美味しいのですが、健康上は要注意です。日本の食パンはパン・ドゥミといつて、サンドウィッチなどをつくるときに用いられ、普段トーストして食べるという習慣はありません。
 値段は店ごとに少しずつ違いますが、バゲット(250グラム)は1本0.95ユーロ(107円)前後、クロワッサンは1つ1ユーロほどです。なおヴァカンスなど長期の休暇が続くときは、パン屋同士の話し合いで、それぞれの休みが重ならないように調整して、一年中どこかの店は開いているようになっています。

 最後に役立つ情報を1つ。2日ほど経って固くなったパンを鳥の餌にせずに食べる方法をお教えします。マサットの村で食べられてきた調理法です。茄子(こちらの茄子は九州のもののよう大きいですが)を適当な本数、1センチ弱ほどの四角に切ったものを、まずオリーブオイルで炒めます。その後少し塩をふって水分を抜いた後、パンを同じ大きさに切り、炒めた茄子とともに、ニンニク、パセリを加えて炒めれば出来上がりです。何ものも無駄にしなかった人たちの素朴な料理を、パンが固くなったときにお試しください。
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by monsieurk | 2011-07-20 06:12 | フランス(生活) | Trackback | Comments(0)
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