ムッシュKの日々の便り

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グラン・ゼコール

 大統領選挙の社会党の有力候補3人はいずれも「国立行政学院(ENA)」の卒業生です。ニコラ・サルコジ大統領もパリ第10大学を卒業後、「パリ政治学院(シャンス・ポー)」に学んでいます。これらはいずれも大学とは別の、「グラン・ゼコール」と呼ばれる高等教育機関で、フランスでは政治家に限らず、各分野の指導的立場の人たちの多くがグラン・ゼコールの出身者です。
 前にも紹介したバカロレア(大学入学資格)を獲得した者は、大学へ進学することが出来ますが、「グラン・ゼコール」に進むには、幾つかの高等中学校(Lycée)に併設されている準備学級で2年ないし3年間猛勉強したあとで、希望のグラン・ゼコールを受験します。ここは文字通りの狭き門で、同年代の一握りの者しか入学することができません。グラン・ゼコールの卒業生が社会的に重用されるゆえんです。
 理工系のグラン・ゼコールとしては、「エコール・ポリテクニック」、「国立パリ高等鉱山学校」、「中央大学校」、「国立航空宇宙大学校」などが名門とされ、文科系では、「高等師範学校」、「パリ政治学院」、「HEC経営大学校」などが有名校です。これらはいずれもナポレオンのもとで18世紀末に創設された伝統校ですが、「国立行政学院(ENA)」は1945年にドゴールの肝いりでつくられたグラン・ゼコールです。ここへは他のグラン・ゼコールを卒業後に入学する者がほとんどで、毎年100名前後しか入学が許されません。卒業生はエナクル(Enacle)と呼ばれて、政界官界のリーダーの多くを固めています。
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リュ・ド・ユルムの高等師範学校




 7月14日の革命記念日のパレードで、先頭をきって行進する「エコール・ポリテクニック」は1794年に開校したグラン・ゼコールで、国防省の所管です。1学年は500名(フランス人400名、留学生100名)で、修了年限は5年。入学試験には学科のほかに体育の試験が課せられて、入学後最初の1カ月間は軍事訓練があります。その後、軍隊、警察、消防隊などに派遣されて6カ月間の体験研修が義務づけられています。
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 学生は入学時に少尉に任官し、1年生は月800ユーロ(1ユーロ114円)、2年生からは1000ユーロの給与が国から支給されます。3年生まではパリの南のパレゾーにある学校内で全員が寄宿生活を送り、4年生になると他のグラン・ゼコールに派遣されて、そこでマスターのディプロムを取得します。5年次には企業研修や海外研修を経験し、卒業論文を提出して修了となります。
 国防省の所管ですが、卒業後に軍人になるのはごく少数で、研究者になるか官庁や企業に就職するものがほとんどです。学生に給与が支給されるのは他の国立のグラン・ゼコールでも同じで、給与水準も似たものです。グラン・ゼコールが国費を投入して人材を育成するための機関と位置づけられていることがこれからも分かります。
 航空機産業の中心地トゥールーズには、「国立航空宇宙大学校(SUPAERO)」があり、航空機や宇宙開発の研究・技術開発を担う人材を養成しています。ここも2009年に創立100年を迎えた名門校です。最初は男子学生だけが入学していましたが、1973年に当時のポンンピドゥー大統領の夫人、マダム・クロード・ポンピドゥーの尽力で、女子学生にも門戸が開かれ、d0238372_22412931.jpg
パトリシア・アフネル(Patricia Haffner)が最初に試験に合格して入学を許されました。彼女の父は定期航路のパイロット、母も民間航空機の操縦桿を握っていました。ですからパトリシアは幼い時からパイロットになることを運命づけられていたのです。
 パトリシアは「SUPAERO」を卒業後、同じくトゥールーズにあるもう一つのグラン・ゼコール、「国立航空大学校(ENAC)」で操縦術を学んでパイロットの資格をとりました。
 女性パイロットとして、エアバスA300、A310、そしてBoeing777の操縦桿を最初に握ったのは彼女です。そしてパトリシア・アフネルは、2009年11月、乗客550人乗りの巨大なA380のパリ-ニューヨーク間の初飛行のパイロットに選ばれる栄誉に浴しました。かつてコンコルドの初飛行の操縦桿を握ったチュルカとともに、フランスの航空史上にその名を刻んだわけです。

 いまブラニャックの空港にあるエアバス社の巨大な格納庫の中では、常時3機のA380の組み立てが行われていて見学することができます。今年7月までに53機のA380が製造され、成田にはドイツのルフトハンザと大韓航空のA380が乗り入れています。
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by monsieurk | 2011-07-21 22:47 | フランス(教育) | Trackback | Comments(0)
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