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ムッシュKの日々の便り

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中国語熱

 中国ブームは世界的な現象で、フランスも例外ではない。
 フランスの中等教育は、日本でいえば中学校と高等学校のレヴェルに相当し、学生はこの段階で、国語つまりフランス語の他に、第一外国語と第二外国語が必須である。フランスの英語教育は、いまは小学校2年生のときからはじまるので、2009年の統計を見ると、第一外国語は、学生の97.7%が英語を選択する。
 英語が世界の共通語なのはまぎれもない事実で、世界に支店を持つフランス資本の企業でさえ、社内の共通語をフランス語ではなく、英語としているところが圧倒的に多い。第一外国語に英語を選ぶのはこうした現実の反映だが、第二外国語はどうかといえば、1位がスペイン語の39.7%である。スペイン語はフランス語と同じくラテン語から派生した言葉だから、習得が比較的やさしく、スペインはもとより南米など多くの人たちがスペイン語を用いているから、スペイン語を話せれば便利だという実用的な側面が背景にある。次がドイツ語の15.4%。3位がイタリア語で4.2%。そして第5位がなんと中国語である。
 中国語を選択する学生はこのところ急増していて、2001年にはフランス全国で6,000人ほどだったものが、2007年には21,000人、2009年には25,685人の学生が中国語を学習している。パーセンテージとしては0.4%と、イタリア語の10分の1だが、アルファベットを使うポルトガル語やロシア語の上をいき、全国で485の高等中学校で中国語が教えられている。中国語の教師も388名と、2004年の135名から3倍に増えている。
 フランスではマンガが読まれるなど一種の日本ブームがあることは、以前のブログ(「Manga」、2011.07 .23 )で紹介した通りで、いまやフランスの地方都市でも本屋には日本のマンガ・コーナーがある。さらにブームはマンガだけでなく、日本の若者ファッションに関心が集まっている。そのために日本語を学びたいという若い人たちが増えているのは事実だが、日本語を正規の授業とし教えている学校はまだまだ少ない。
 外国に自国語を普及する機関としては、イギリスのBritish Council、ドイツのGoethe Institut、そしてフランスのAlliance françaiseなどが有名だが、中国もConfucius Institut(孔子学院)を世界中につくって、中国語の普及に努めている。これはHanbanという北京に本部がある、世界に中国語を普及する目的の組織「中国語国際協議会」が出資しているもので、フランス全国にすでに12校あり、一番新しいものは南フランスのトゥールーズに最近オープンした。
 Hanban、「中国語国際協議会」は、毎年1000人以上の中国語の教師を海外に送りだしていて、アメリカ、ヴェトナム、タイ、韓国などから講師の派遣要請が多いという。この他、最近では400人のアメリカ人の中国語教師が協議会の資金で中国に招待され、フランスからはここ毎年間25人の中国語の教師の一行が招待されているという。こうしたところにも、経済発展の著しい中国の気込みが感じられる。
 この点は日本文学の海外普及のための翻訳事業に出していた基金を取りやめにし、日本語の普及を民間の努力に頼っている日本とはおよそ逆である。言葉は文化の根幹をなすものであり、その普及は大きな意味を持っている。フランスにおける日本語の普及では、高等教育機関「東洋語学校」に教師を派遣して、これまでは優秀な日本語や日本文化の研究者が育ってきたが、中学校や高等学校のレヴェルで日本語を普及させるための日本側の協力が必要がある。ちなみにトゥールーズの、日本人が経営するフランス料理のレストランでは、「トゥールーズ日本人協会で日本語を教えます」という小さなアナウンスメントを見かけた。
by monsieurk | 2012-11-19 23:30 | フランス(教育)
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フランスのこと、本のこと、etc. 思い付くままに。


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