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ルーヴルの一番美しいお尻

 「ルーヴル美術館のお尻の日」という記事を週刊誌「エクスプレス」の2013年11月13日-19日号で見つけた。筆者はアニック・コロナ=セザリ、写真撮影はベルトラン・デプレである。フランス語の記事は「エクスプレス」誌の電子版(http://www/lexpress.fr/culture/art/les-plus-belles-fesses-au-louvre/)でも読むことができる。
 コロナ=セザリ記者の見学体験記によれば、一般見学者が去った午後6時、ルーヴル美術館の入口であるガラスのピラミッドの団体入口で10数人の参加者とともに待っていると、案内人兼解説者のブリュノ・ド・ベックが現れた。ベックがこの夜、見学者たちを誘ったのは、「ルーヴル美術館で一番美しいお尻」を探して見てまわることだった。
 「見巧者」を自認する彼によれば、裸体は「ルイ15世様式の箪笥などより刺激的」だが、「視る喜びを呼び覚ます」には、視るための最適な角度を見つけなくてはならない。そこで見学者たちは、箸の先に、覗き穴をあけた三角形の厚紙をつけた道具をもたされる。この穴から片目で覗くと、絵や彫刻の全体像は捨象され、ある部分だけが切り取られて、そこに注意を集中することができる。さらに大理石やブロンズの彫刻や絵具で描かれたお尻は人間の肌へと変貌をとげる。「こうしてあなた方は戦慄が走るような視角を発見することができる」と、ベックは言う。
 この夜、見学者たちが先ず対面したのが、《モナ・リザ》へ行く手前の「ダリュの陳列室」に展示されている一群の大理石の古代彫刻だった。さらに進むと「ミケランジェロの陳列室」にバルトリーニの彫刻があり、普段なら一瞥して通りすぎる作品だが、彫刻の後ろにまわって、例の道具の覗き穴からお尻を眺めるとまるで違って見える。「ゴダールの映画『軽蔑』のなかで、ブリジット・バルドーがミシェル・ピコリに、《わたしのお尻、あなた好きでしょう? わたしのお尻》というが、誰がこれに異をとなえることができようか?」というわけである。
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 こうしてミロのヴィーナスなど古代ギリシャやローマの彫刻はもちろん、ミケランジェロ、写真で紹介したイタリア・ルネサンス期の巨匠ベルニーニの男性とも女性とも見える後ろ姿の彫刻、ドラクロワ、アングルなどの絵に描かれたお尻を眺めると、正面から見ていたときの作品、とりわけ人間のお尻の美しさを再発見することになる。ブリュノ・ド・ベックがこのツアーを企画した意図は、まさしく常識の目を取り払うことで新鮮な美を発見することなのである。
 ベックは1958年生まれで、ものを観察することが好きな少年だった。そんな彼は1994年に観光省の正式ガイドの免許を取得している。今年2013年9月には、『ルーヴルの一番美しいお尻(Les Plus Belles Fesses du Louvre)』(Séguier)を出版した。もっとも彼のガイドは「ルーヴルのお尻」だけではなく、「凱旋門」、「パリ、サン・ジェルマン・デプレ、修道院からボリス・ヴィアンまで」、「ペール・ラシェーズ墓地の彼方へ」、「いつも見るセーヌ川」、「古いパリの新しい見方」などのツアーがあり、いずれも新たなものの見方を教えてくれ、好評だという。
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by monsieurk | 2013-11-29 22:30 | フランス(美術) | Trackback | Comments(0)
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