マラルメの肖像Ⅱ「ナダールの写真」
ナダールの娘マルト・ナダールによれば、1895年に撮影されたとされる。さらに彼女は、「仕事机に向かう詩人と同じよな肩掛けをもっていたP・ナダールは、親しい人たちがよく目にした友人である詩人の姿を定着しようと思った」と書いている。
机に向かう詩人は当時よく見られた典型的なポーズで、ペンを手に仕事机に向かうマラルメの前には、伏せられた本、白い紙、インク壺がある。ただ肩に掛けた厚手のショールが、写真を個性的なものにしている。マラルメの寒がりはよく知られていて、火曜会の集いで、彼はいつも陶製の暖炉を背にして話をしたものだった。
展示されたもう一点は、この写真をもとに鉛筆で再現したもので、背景を壁に変え、そこにはクロード・モネの風景画《ジュフォスのセーヌ川》がかけられている。これは1890年に描かれたあと詩人に贈られたもので、ローマ通りのアパルトマンのサロン兼食堂に飾られていたものである。これも火曜会を訪れた客にはお馴染みのものであった。