ムッシュKの日々の便り

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男と女――第六部(20)

 鮫

   一

海のうはっつらで鮫が、
ごろりごろりと転がってゐる。

鮫は、動かない。

それに、ひとりでに位置がゆづって並んだり、
 ぶっちがひになったり、
又は、渺かなむかうへうすぼんやり
気球のやうに浮上ったり、

どこまでもひょろけた背のたゝない、
竹のやうに青い、だが、どんよりくらい、
 塩辛い・・・眩(くら)りとする鹹水(かんすい)へ
石塊の塡(うずま)った、どぎどぎした空罐が、
かるがると、水にもまれておちてゆく。

鮫はかぶりつかない。
お腹がいっぱいなのだ。

奴(やっこ)たちの腹のなかには、食(は)みでる程人間がつまってゐるのだ。
切口の熟れはじけた片腕や、
もりっと喰取ってきた股から下や、
小枕びやうな胴体が。

鮫はもう、「何も要らねえ」と、眼を細くして、
 うっとりうとりしてゐるのだ。

 これが長編詩「鮫」の書き出しである。
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by monsieurk | 2016-11-05 22:30 | 芸術 | Trackback | Comments(0)
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