ムッシュKの日々の便り

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男と女――第七部(4)

 ところで、「中央公論」六月号に掲載されたもう一篇「落下傘」は次のような詩である。

  落下傘
  
   ながい外國放浪の旅の途次、はるかにことよせて、
   郷詩一篇。
  
 落下傘がひらく。
じゆつなげに、

旋花のやうに、しをれもつれて。

晴天にひとり泛びたゞよふ
なんといふこの淋しさだ。
・・・・・・・

   二

 この足のしたにあるのはどこだ。
・・・わたしの祖国!

さいはひなるかな。わたしはあそこで生れた。
 戦捷の國。
父祖のむかしから
女たちの貞淑な國。

もみ殻や、魚の骨。
ひもじいときにも微笑(ほゝゑ)む
躾。
さむいなりふり
有情(あはれ)な風物。

 あそこには、なによりわたしの言葉がつつかり通じ、かほいろの底の意味までわかりあ
  ふ、
 額の狭ひ、つきつめた眼光、肩骨のとがつた、なつかしい朋党達がゐる。

「もののふの
 たのみあるかの
 酒宴かな。」

洪水(でみづ)のなかの電柱。
草ぶきの廂にも
ゆれる日の丸。

さくさしぐれ。
石理(きめ)あたらしい
忠魂碑。

義理人情の並ぶ家庇。
盆栽。
おきものの冨士。 

    三

ゆらりゆらりとおちてゆきながら
目をつぶり、
「神さま。
 どうぞ。まちがひなく、ふるさとの楽土につきますやうに。
 風のまにまに、海上にふきながされてゆきませんやうに。
 足のしたが、刹那にかききえる夢であつたりしませんやうに。
 萬一、地球の引力にそつぽむかれて、落ちても、落ちても、着くところがないやうな、悲しいことになり
ませんやうに。」 ― 終 ―

(深澤索一畫)
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by monsieurk | 2017-01-19 22:30 | 芸術 | Trackback | Comments(0)
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