マラルメの肖像Ⅶ「ドルナックの写真」
1893年4月22日、マラルメがマルサンに宛てて出した手紙(名前をポルPolと誤記)に、以下の一節がある。「もちろん、ムッシュ、わたしはいつでもお役にたちます。あなたの素敵な刊行物を存じ上げていますし、『自宅におけるわが同時代人』の価値も分かっています。お出でくださる日時を明後日月曜日の午前10時としてはどうでしょうか。必要ならもう少し前でも。」
一枚目の写真では、マラルメはルイ15世風の椅子に腰かけ、左手に紙片を持ち、右手はポケットに入れている。暖炉の上には「日本の箪笥(じつは中国のもの)」が乗っており、中央の飾り棚には、ボードレールの写真とジョルジュ・ロッシュグロスによるテオドール・ド・バンヴィルの版画が飾られている。
二枚目は食堂兼サロンで撮られたもので、マラルメは陶製の暖炉の前で、揺り椅子(ロッキング・チェア)に腰かけている。左手の人指し指と中指の間に、巻きたばこ煙草をつめたパイプをはさみ、左上方の壁には、マネが描いた彼自身の肖像画がかかっている。
三枚目の写真(左)は今回の展覧会には出展されなかったが、同じく食堂兼サロンで撮られたもので、マラルメは暖炉と絵の間に立ち、丸テーブルには中国製の煙草入れの壺が見える。「火曜会」に集まった面々は、ここから煙草をつまんで紙巻煙草をつくり、狭い部屋はたちまち紫煙で一杯になった。なおこの写真の撮影者と撮影時期はいまのところ不明である。