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ムッシュKの日々の便り

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ガリア書房閉店

 今月初め、京都のガリア書房の右衛門佐(よもさ)時雄さんから、今年7月をもって店を閉めることにしたという電話があり、追いかけるようにして、「フランス書目録104号」が送られてきた。
 京都大学に勤務したときから、百万遍にあるガリア書房には、本の取り寄せなど大変世話になってきたから、まことに残念な知らせだった。
 最終号となるカタログ104号の表紙裏には、右衛門佐さんの次のような挨拶が印刷されている。ご本人の了解のもとに、一部を紹介させていただく。ガリア書房閉店_d0238372_1110552.jpg
 「新年度早々残念なお知らせで恐縮ですが、当ガリア書房は本年7月をもちまして閉店することになりました。インターネットの普及にともない洋書輸入の業態も大きな変容を余儀なくされてまいりましたが、ネット販売の隆盛やネット上でも文献データの公開、大学研究費予算の大幅な削減、フランス学習者研究者の減少など複合的な要因が重なり、ガリア書房も遂に幕を下ろす時が参りました。
 京都百万遍の地に熱い想いを込めて当社を設立しましたのが革命二百周年祝祭前夜の1989年4月、あれから26年という年月が経過しましたが、閉店するにいたった今年は奇しくも帝政崩壊の二百周年にあたり、いささか運命的なものを感じない訳にはいきません。ただこの間、季刊として欠号なく発行して参りましたこの「フランス書目録」を始め、各種の書誌情報を恒常的にご提供できましたことは、多少なりとも皆様方のご学習ご研究のの一助になったのではと、自らに言い聞かせている次第です。」
 右衛門佐さんは夫人と二人三脚でガリア書房を経営し、関西を中心に全国のフランス語・フランス文学の研究者や学生に、フランス関係の新刊情報を提供し続けてくれた。
 最終号を見ても、書誌情報のカバー範囲は、歴史、法律、経済、社会、教育、フェミニズム、哲学・思想、文学、語学・言語学、芸術・演劇・映画におよび、しかも文学関係で言えば、文学全般・比較文学、古典文学・中世文学、16世紀文学、17世紀文学、18世紀文学、20~21世紀文学と細分されていて、各時代の作家や詩人の作品、さらに著者や作品を対象とした研究書がリストアップされている。
 私たち読者や研究者は、自分が専門とする文学はもとより、その周辺にかかわる最新の研究を知ることができ、必要があればガリア書房を通して、フランスその他海外から本を取り寄せてもらうこともできた。
 挨拶文にある通り、日本におけるフランス文化・フランス文学をめぐる状況は、ここ10年ほど大きく変わった。それも年を経るごとに厳しくなる一方である。
これに加えてインターネットが普及し、個人が海外の出版元へ直接本を注文し取り寄せることが出来るようになった。本の取次ぎ販売を主とするガリア書房が閉店を決断されたのもやむを得ない事情と拝察する。ただ一フランス文学の研究者としては、今後、必要な書誌情報をどうやって手に入れればよいのか、途方に暮れている。海外の出版社も、ネット上に新刊案内を公開しているが、個人が毎年出版される膨大な本の情報を探し、必要なものを選び出すことは至難の業である。
 右衛門佐さんは最終号の編集後記で、こんな苦労話も披露している。
「想い起せば当初はまだタイプライターでしたので版下の制作には大変な苦労がございました。(中略)毎号最終頁を打ち終わる頃には疲労困憊しておりました。/ 数年が経ちガリア書房もコンピューターの導入を目指しましたが、日本語と仏語など欧州特殊文字の混在したデータを扱えるソフトが見つからず行き詰まっていたところ、遂にマッキントッシュ用の「ファイルメーカー」というデータベースソフトに辿り着きます。当時は2万件程度のデータしか扱えませんでしたが、丸一年まけて書籍管理や販売管理などのシステムを独学で構築しました。これが極めて優れもののソフトで、その後データも無制限に扱えるようになり、目録の制作にもこの最終号まで充分威力を発揮してくれました。」
 こうした努力のお陰で、フランスをはじめ世界各地で出版される本の情報をいち早く知ることができた。26年間、大いに助けられました。有難うございました。
by monsieurk | 2015-04-04 22:30 | 時事
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