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ムッシュKの日々の便り

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詩集「アドニード」Ⅱ

 

海のどこかで
 ――夢ではそこがどこか ぼくには分かっていた――
ひとりの裸の娘が
気づかれもせず
みな服を着た群衆を横切る
彼女はぼくを捕まえるが ぼくはどぎまぎしない
それがぼくの最初の夢だった
そして突然ぼくは見る
昔はまだ最新式だった大きな車に乗っている母を
馬と御者つきの
結婚式と宴会用の馬車だ
花嫁はぼくの母だ
白衣なのか
いまではなにも分からない
彼女のそばにはぼくの父がいる
それともぼくが彼を追加したのかも知れない
そして母はぼくを見つけて
いつもの子どもっぽい微笑で笑いかける
でも彼女はぼくに向かって
やさしい眼差しと同時に非難の目つきをする
ぼくは言い訳をしない
ぼくは彼女の結婚式に行くべきだった
もちろんぼくは招待されていなかったが
ぼくは家族の一員で みなは待っていたのだ
いまはもう遅すぎる
宴会はすんだ
それはぼくにとって些細なことではなく
もっと緊急になすべきことだった
ぼくはそれをしなかったのだ
             (1960年12月11日、朝4時)

  下がプレヴェールの自筆とホアン・ミロの挿画による「夢」のリトグラフ。
詩集「アドニード」Ⅱ_d0238372_1625760.jpg
 
     ☆

大した事が
起こるのは
大した人が
いないとき

     ☆

ぼくはぼくが知っていることをすべて知らない
そしてぼくがなにも知らないことをまったく知らない
どうしてぼくは死を信じることができるのか
それは君がいつか死ぬことを知っているから。

    ☆

ゴール人たちは一つのことしか
信じなかった
彼らは破壊科学を知っていた
彼らは前原子核人だった。

    ☆

男と女が
何も言わずに見つめ合っている
どちらも黙っているのではないが
彼らは互いに理解することができない。(続)
by monsieurk | 2015-09-27 22:30 |
line

フランスのこと、本のこと、etc. 思い付くままに。


by monsieurk
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