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詩游会の映画鑑賞「灰とダイヤモンド」

 前回のブログで紹介した、放送大学神奈川学習センターでの詩游会では、ときどき映画会も開いている。5月の第2回目は、ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の「灰とダイヤモンド」(1958年。103分)以下は、その観賞用に書いた背景説明の文章である、

 第二次世界大戦が終結した、1945年5月8日。ポーランドの地方都市。教会の前で二人の若者が暗殺を目的に待ち伏せをしている。相手は県の労働者統一党(共産党)書記シュチューカである。
 ポーランドは第二次大戦中の5年間、ナチス・ドイツの占領下にあり、国内の抵抗勢力は親ソビエト的な共産主義者(人民軍)と、愛国的な反共主義者(国内軍)に大きく二分されていた。両者は首都ワルシャワに迫るソビエト軍に呼応して、1944年8月1日に、凡そ7万人のポーランド人がワルシャワで蜂起した。しかし圧倒的兵力を残していたドイツ軍の反撃をうけて殲滅され、古都ワルシャワは破壊されてしまう。
 この結果、国内軍と共産党系の人民軍は分裂し、国内軍は共産党系に吸収されるのを恐れて、1945年11月には配下の軍隊に解散を命じた。
 映画の冒頭で待ち伏せしている二人の若者、マチェックとアンジェイは、この国内軍の残党で、解散させられた後は、地方の森を拠点にして、ソ連軍やポーランド統一労働党(共産党系)にたいしてゲリラ活動を行なっている。
 1945年5月8日、ナチス・ドイツが降伏して、共産党系のポーランド労働者統一党が国内の覇権を握った。するとかつて国内軍に属していたゲリラ・グループは、共産主義政権の樹立を阻止しようとして抵抗し、国内は内戦状態に陥った。映画の冒頭でも、テロ・グループは中央の指令で、県の指導者である共産主義者の暗殺をこころみるが、殺したのは人違いで、普通の労働者だった。
 こうした歴史的転換期を舞台にした映画「灰とダイヤモンド」は、二人の主要人物、狙われた労働者党の地方書記シュチューカと、テロをくわだてた国内軍系のゲリラ、マチェクを軸に展開する。シュチューカは、かつてスペイン内戦に参加して負傷し、第二次大戦ではソ連軍に加わってドイツ軍と戦った経歴の持ち主である。いまは地方共産党の責任者として、地方の行政まで握ろうとしている。
 一方のマチェクは、ワルシャワ蜂起に参加したが、追い詰められて地下水道を逃げまわった(これが映画「地下水道」のテーマである)体験を持つ。いまはワルシャワから地方に来て、共産党系の勢力にたいするテロ活動を行っている。これもワルシャワに残る国内軍の生き残りの組織からの命令で行動している。
 いまは立場の異なる二人だが、かつては共に祖国を解放するため、ナチスと勇敢に戦った過去があり、そのころを良き時代として思い出している。それがナチス・ドイツという敵がいなくなると、またちまち対立する関係になってしまうのだ。
 映画では、こうした当時の複雑な政治状況を背景に、上からの命令でテロを実行してきた若者が、人を愛することで過去の自分を捨てて、新たな生き方を選択しようとした瞬間に悲劇が起こる。
 マチェクと恋人が教会の廃墟で、十字架のキリストが逆吊りになっているところで語り合うシーンは、映画史上最高のものといわれる。
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原作はイエジー・アンジェイェフスキの『灰とダイヤモンド』(岩波文庫)
脚本は原作者とアンジェイ・ワイダ(ポーランド語ではヴァイダ)
原作では、1945年5月5日から8日までの4日間にわたる物語を、映画では約24時間の出来事に圧縮して展開している。
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by monsieurk | 2017-07-14 22:30 | 映画
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